結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


自力で会社を立ち上げたということは、もはや早瀬電子を継ぐ気はないということだ。
父は渋い顔をしていたが、異母妹の梨乃に優秀な婿を迎えることにすればいいと義母は喜んでいた。

仕事は順調だし、忙しい。湊斗は充実した日々を送っていた。
ところがアメリカに出張しているとき、梨乃が駆け落ち同然に守屋徹という男性と結婚したという連絡が入った。

驚いて帰国したが、父も母も取り乱していて詳しい事情がわからない。
溺愛していた梨乃が親に逆らったので、精神的にこたえているのだろう。
そう思うと、かける言葉すらみつからなかった。

実家を出たころ幼かった梨乃は、二十歳になっていた。
湊斗は三十三だから、もう十年以上も会っていないことになる。
実家にいた高校時代ですらあまり会話した記憶がないから、写真を見ても実感がわかないくらいだ。

おかしなことに、父は結婚したばかりの梨乃夫婦を急いで外国に追いやった。その理由を父に尋ねても「相手の希望だ」と言うだけだ。
梨乃が家を出てまで結婚したがったのに、守屋徹のことは「よく知らない」と義母も言葉を濁す。
なんだが父と義母に湊斗は違和感を覚えた。
娘が好きな人と結婚して喜ばしいはずなのに、がっくりと肩を落とすふたりは年齢以上に老け込んだ気がする。

(なにか隠している)

湊斗にすら言えない理由がわからなくて、うすら寒いものを感じていた。



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