結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
先日は、梨乃がいなくて寂しいだろうと久しぶりに実家に帰った。
出張の土産などを渡してから、少し義母の相手をした。
父は不在だったが、最近は体調を崩すことが多くなったようで、湊斗に家に戻ってほしそうにしているらしい。
だがとっくに家を出て起業し、マンションで暮らしている湊斗にそんな選択肢はない。
「難しいですね」
湊斗が言うと、義母はさめざめと泣きだした。
「こんなことになったのも、あの女のせいだわ」
「え?」
義母は「あの女」とは言うが、けして名前は口にしない。
「あの女が徹さんを誘惑するから」
「いったい何があったのですか」
悔しそうに話す母は、かつての冷静さを失っていた。
義母が涙ながらに話す内容をまとめると、どうやら結婚相手に別の女性がいたようだ。
そもそも梨乃は、両親に内緒で恋人と付き合っていたらしい。
大学生なんてまだ子どもだと思っていたが、相手とは深い関係だったという。
「もう婚約していたんですか」
梨乃の結婚が正式に決まったとは、聞いていなかった。
「それはまだだったけど、本気で好きあっていたんだから許すしかないでしょ」
どうやら義母は、相手に不服があるようだ。
それでも勝手に結婚してしまったから、受け入れるしかないのだろう。
「愛があれば、なんとかなるわ」
そう言いながらもどこか不満げだし、湊斗は祝福していいのか迷うばかりだ。
愛だの恋だの、そこまで価値があるものだとは思えない。
たとえば異国の地で熱い恋に落ちた父も、湊斗の生みの母とあっけなく別れたではないか。