結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
思った以上に体は軽いし、華奢な骨格だ。
「暴れると危ない」
それだけは伝えて、階段を上がっていく。
外観の印象の通り、狭い階段や廊下は歩きにくかったがあっという間に部屋に着く。
「ここか」
「は、はい」
なるべく足に負担がかからないよう、そっと廊下に彩奈を降ろした。
すぐ車に戻ろうとしたら「ありがとうございました」という大きな声が聞こえてきた。
なんだか楽しくなってきた。このところの鬱々とした気分が晴れていくので、気紛れに手を振っておいた。
「待たせた」
そう言って乗り込もうとしたら、井上が「お嬢さんが見送ってくれてますよ」と言う。
チラリと見上げれば、確かに彩奈の小さな顔が見えた。
すぐに車に乗り込んで、行先を告げる。
「会社に戻ろう」
「はい」
これで昨日の後始末は、もういいだろう。
これから湊斗がしなくてはいけないのは、突然の梨乃の結婚で歯車が狂ってしまった両親を落ち着かせることだ。
「コーヒーでも飲めばよかったな」
「なにかおっしゃいましたか?」
「いや」
お茶でもしながら彩奈ともう少し話してみたかったなと思っていた本音が、つい口から出てしまったようだ。