結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
湊斗は梨乃から恋人を奪おうとした「あの女」がどういう人物なのか、突き止めたいと思った。
もし意図的に徹を誘惑した悪女なら許せない。梨乃だって大勢に祝福されて、華やかに結婚式を挙げたかっただろう。
義母が自己満足のために悪く言っているとわかっていても、真実が知りたかった。
その夜は眠れそうになかったので、寝酒をあおった。
湊斗の住むマンションは、海に近い場所にある。
一日が終わる時間、東京湾の夜景を眺めながら飲む酒はいつもなら格別なのに、いつになくヴィンテージウイスキーの苦みが強い。
(まいったな)
眠るための酒が、かえって神経をとがらせている。
ふと彩奈の顔を思い出した。
これといって特徴があるわけでもなく、目を引く美人というわけでもない。
ただ柔らかくて、透明感がある。
今日話しただけでも、几帳面で控えめな性格だとわかった。
(井口彩奈か……)
その名は、やがて湊斗の記憶の中に埋もれていった。