結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
(まさか、俺の会社に堂々とやってくるとは)
どちらにしても、湊斗はしばらく様子を見ることにした。
彩奈の秘書としての力量を知らなくては、派遣とはいえ会社に置いておく意味がない。
秘書検定の資格を持っていてもまだ若いし、あまり期待はしていなかった。
だがエクセレント誠から派遣されただけあって、彩奈は優秀だった。
それに山本室長や人見主任の評価も高い。英語での対応も十分にこなしているらしい。
細かな点に気がつくから、取引先にも好意的に受け入れられていて、高齢のクライアントには特に評判がいいとも聞く。
山本などは、東京に支社を置く外資系の会社から引き抜かれるのではと心配しているくらいだ。
最近では、父親が入院している山本の代わりに湊斗に同行するようになってきた。
気がつけば指示を待つだけでなく、しっかり必要になりそうなものを自ら考えて準備している。
個人的に接する時間が増えれば増えるほど、湊斗は義母に刷り込まれていた「あの女」に対する感情を持て余していた。
(個人的な理由だけで、判断してはいけない)
湊斗は彩奈に対して冷静になろうとした。
早瀬М&Aパートナーズに来た理由はわからないままだが、どうやら優秀な秘書であることは間違いない。
秋の気配を感じる頃には、湊斗自身が彩奈を手放せなくなっていた。
それが秘書としてなのか、女性として魅力を感じているからなのか答えは出せずにいた。