結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
ホテルの部屋でその話をしようと思っていたのに、夜景を見る彩奈の表情を見たときぐらりと心が揺れた。
夜景に見とれている瞳に、湊斗を意識させたいと思ってしまった。
(俺は、彩奈に引かれている)
社長ではなくひとりの男として彩奈の前に立ちたい気持ちが暴走し、気がつけば唇を奪っていた。
これまで自覚していなったが、湊斗は秘書としてではなく、ひとりの女性として彩奈を求めていたのだ。
突然のことに驚いたのだろう。彩奈からは戸惑いを感じたが、嫌悪は伝わってこなかった。
それがキスを甘いものしていく。
だが、理性がそれ以上進むのを止めた。
「すまない」
湊斗の口から出たのは、謝罪の言葉だった。
(まだ早い)
早瀬М&Aパートナーズは社内恋愛を禁止しているわけではないが、先走ってしまったことは否めない。
ただ、彩奈は拒否することもなく湊斗を受け入れてくれたのは確かだ。
(彼女の気持ちも同じだと信じたい)
今の関係のままでは、前に進めない。契約終了までに時間はあると自分に言い聞かせて、湊斗は彩奈の体をそっと離した。
ゆっくりでいい。まずは彩奈がすべてを打ち明けてくれるのを待とうと決めた。