結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


彩奈の望みは、もう二度と湊斗と会わないこと。
過去のしがらみから逃れること。

今はそれしか考えられなかった。

彩奈の気持ちを理解したのか、誠子の行動は早かった。

急病なら、派遣社員の変更は可能だ。カレンダーでは三が日のあと土日を挟むから、出勤まであと三日ある。
早瀬М&Aパートナーズには彩奈は病欠と連絡して、代わりの人を派遣することにした。
それに引っ越しもしなければいけないから、新しく住む場所も任せてほしいと誠子は言う。

「今頃、早瀬社長はあなたを探しているはずよ」

誠子はそう言うが、それでも彩奈は会えないと答える。

「すべて縁を切る。それでいい?」

「はい」

今の彩奈にはそれが一番いいように思えた。
仕事も辞めて、湊斗が知っている住所からも消える。

でも、その先はどうすればいいのだろう。

彩奈が呆然としていると、誠子がパンフレットを出してきた。
美しい風景の写真がいくつも載っているものだ。

春の桜、穏やかな波のビーチ、秋の紅葉、冬には遠くの山に一面の雪。

「あの、これは?」

「ここどこって感じでしょ」
「はい」

「琵琶湖畔よ」





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