結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない



東京に帰った彩奈が頼れる場所は実家ではない。すぐに誠子の家に向かった。
新年早々に申し訳なかったが、エクセレント誠の仕事が絡んでいる以上、黙っているわけにはいかなかった。

誠子と夫はとても驚いていたが、青い顔をした彩奈を温かく迎えてくれた。

乱れた心のまま今日までのことを口にする。もう守秘義務だのなんだの言ってはいられなかった。
結婚が急に取りやめになったことは話していたが、誠子もまさかそこまで複雑な話だとは思っていなかったようだ。
話がきちんと伝わるかどうか不安だったが、聞き上手な誠子は理解してくれた。

彩奈が守屋徹の恋人の名を知らなかったことが、すべての元凶だ。
どんなに後悔しても、もう遅い。

早瀬М&Aパートナーズに派遣されるとき、誠子に湊斗と出会っていたことを伝えなかったのは彩奈のミスだ。
おまけに湊斗の義母は、娘が家出同然の結婚をしたのは彩奈のせいだと思い込んでいる。
その誤解を解く方法も、彩奈には浮かんでこなかった。

誠子は黙って聞いてくれていたが、彩奈が話し終えるとギュッと抱きしめてくれた。

「言いにくいことまで話してくれてありがとう」
「誠子先輩」

今は社長というより、大学時代からの先輩だと思う気持ちの方が強かった。

「彩奈ひとりが悪いんじゃないよ」
「でも」

「逆らえない運命ってあるんだなって、話を聞きながらつくづく思ったわ」

背中を優しくなでられて、彩奈はとうとう泣き出した。
こらえていた涙が、もうどうやっても止まらない。

「思いっきり泣きなさい」

誠子は彩奈を甘やかすことも、突き放すこともしなかった。
ただ彩奈が泣き止むまで、黙って待ってくれた。

「これからのことを考えよう」

彩奈が泣きやんでから、誠子は静かに尋ねてきた。

「彩奈はどうしたい?」




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