結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
誠子からその話を聞いて、おそらくあの日に聞いた湊斗と義母の話に偽りはなかったと彩奈は確信した。
湊斗の心の中で、彩奈は「異母妹の幸せを奪おうとした女」だ。
軽井沢に行くときに「恋人として」と言われたとしても、しょせん偽りの存在でしかなかった。
(愛されていたわけじゃない)
そう思うと、湊斗に妊娠したことを伝える気にはなれなかった。
早瀬家の血が流れているとしても、恨まれたり嫌われている人たちが喜んでくれるとは思えない。
それに湊斗だって、あの数日で子どもができたと言っても信じてくれないかもしれない。
(この子は私の子)
大切に育てるからパパがいないことを許してねと、彩奈はおなかに向かって何度も話しかけた。
やがて生まれた子は、愛らしい男の子。大きくなるにつれて目立つようになった少し茶色っぽい髪の色が、湊斗と同じだった。
その色を見るたびに湊斗を思い出して胸が痛んだが、海里はとても元気にすくすくと育った。
それに坂上夫妻からは、とても大切にされている。
今の仕事は秘書というより、ペンションでの事務や接客が中心だ。
それでも海里と離れずに暮らしていける。彩奈はそれだけで十分だった。