結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「そういえば、誠子さんから明日こっちへ来るって電話があったわ」
「わあ、久しぶりですね」
忙しい誠子がわざわざこの町までやってくるとは、めったにないことだ。
美和も詳しいことを聞いていないらしく、仕事なのか休みをとったのかはっきりしない。
「泊まってくれるかしら」
「きっと美和さんの手料理を楽しみにされてますよ」
彩奈と美和が食事の内容をあれこれと相談していたら、オーナーと海里が帰ってきた。
「ただいまあ」
ふたりの声は揃っていて、本当の祖父と孫のようだ。
「ばあちゃん、おさかな釣れたよ~」
「すごいね、海里ちゃん」
オーナーもニコニコ顔だ。
春めいてきた季節、産卵のために浅瀬に集まってくるコイ科の魚ホンモロコは海里も大好きだ。
南蛮漬けが一番のお気に入りで、おそらく美和に作ってとねだるだろう。
「すっぱいの作ってね」
「はいはい。まかせてちょうだい」
「海里、手を洗いましょう」
「は~い」
毎日が平和に過ぎていく。このささやかな幸せが、彩奈には何より大切だった。