結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


「わかりません」

正直な気持ちを彩奈は口にした。
ここで大丈夫だと答えたとしても、目の前に湊斗が現れたら取り乱してしまいそうだ。

「そう」

でも父の具合は気になるし、母が手紙を誠子に託すのはよほどのことだ。
郵便で送ったら彩奈が読まないかもしれないと思って、誠子に無理を言ったのかもしれない。

「彩奈さん」

誠子と彩奈のやりとりを、黙って見守ってくれていた坂上夫妻が話しかけてきた。

「いってらっしゃい」
「美和さん」

ふたりはいつも通りの温かい口調で話しかけてくれている。

「私たちも年だから言えるんだけど、ご両親とは会える時に会っておかないと」

「そうだよ。ペンションの仕事はなんとでもなるし、落ち着いたら帰ってきてくれたらいいんだから」

「オーナー」

帰る場所はあるよと言ってくれるのが、何よりうれしい。
ここで海里と暮らしてきた時間は無駄ではなかったようだ。

「私たちは海里ちゃんが育っていく様子を毎日見られてうれしかった。きっとご両親も会いたがっていると思うのよ」

彩奈は坂口夫妻の言葉に背を押され、海里とともに東京へ帰ることを決めた。







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