結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない


「彩奈。一度、東京に帰ったら?」

あれから四年も経っているし、もう守屋家や早瀬家に気を使わなくてもいいのではと誠子は言う。

「ずいぶん騒がれた結婚だったらしいけど、もう世間じゃあ忘れているわよ」

どうやら梨乃と徹は留学とは名ばかりで、今でも親の助けを受けながら暮らしているらしい。

「結婚したっていっても、いつまで持つかしらね」

誠子は辛らつな言い方をする。

「早瀬社長は、相変わらず仕事ばかりしているわ」

こちらから尋ねるより先に、誠子が湊斗の近況を教えてくれた。

「そうですか」

「それに早瀬社長が結婚するとか、婚約したってうわさすら聞いたことがないの」

彩奈はなるべく気にしないようにしていたし、湊斗の年齢なら四年の間にきっと結婚したはずだと思っていた。

「まさか……」

いくら仕事が好きでも、四十近くまで独身でいることを早瀬家が許しているとは思えない。
あのヒステリックな義母の様子が思い出されて、彩奈は暗い気持ちになってきた。

「彩奈はもう大丈夫なの?」

もう早瀬湊斗を忘れられたのかと誠子に問われても、彩奈は「はい」とは答えられない。

誰よりも彩奈は知っている。
湊斗の持つオーラ、人を引き付けてやまない魅力。
クールに見えて、とても優しい性格だから頼ってしまいたくなる。

(まだ、こんなに好きだから)



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