結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
これまで知りたいと思いながら知りえなえった事実が湊斗を打ちのめした。
「あれから彩奈は、自分がぬくぬくと実家で暮らすわけにはいかないと、家を出ました。今回、私が倒れたことで、やっと、帰ってきてくれたのです」
「そうでしたか」
やはり「あの女のせいだ」と言って騒いだのは、義母の思い込みと言いがかりだった。
「話してくださってありがとうございます」
彩奈の父はこくりとうなずいたが、彩奈と湊斗の関係に一切ふれてこない。孫の父親だと分かっているだろうに、あえて何も言わずにいるようだ。
「ここで、お待ち、ください」
父親はまたうなずいてから、杖をついてゆっくりと立ち上がった。
ずっと緊張していたのか、湊斗は体中の力を抜くようにフーッと大きく息を吐いた。
すると屋敷の中がシンと静まり返っているのに気がついた。
小さな男の子がいるのに、こんなに静かなのはおかしいのではないだろうか。
そう思うと急に不安になって、悪いことばかりを考える。
海里と呼ばれていた男の子は、おとなしいのだろうか。まさか、彩奈が子どもを連れて出て行ったのか。
父親が湊斗だけと話したのは、彩奈をここから逃がす時間稼ぎでだったのかもしれない。
そう思うと、居てもたってもいられなくなった。
急いで探しに行かなくてはと立ち上がったとき、軽くドアがノックされた。
「失礼します」
彩奈の顔が見えたとたん、湊斗は思わず抱きしめたくなってしまった。もうどこにもやりたくない。