黒兎の相棒は総長でも止められない

ちょっとした事実

夜。

夕飯のあと、私はリビングのソファに座ってスマホをいじっていた。
お兄ちゃんはいつも通りダイニングの方で書類をいじってる。

 

なんとなく静かな時間。

その空気を破るように、お兄ちゃんがぽつりと話しかけてきた。

 

「そういえばさ」

 

「ん?」

 

「最近、また凪に頼んでるけど――」

 

「ああ…うん」

 

「アイツな、最近は俺が頼む前に『今日も迎え行こうか?』って連絡よこしてくる時あるんだよ」

 

「……え?」

 

一瞬、指先が止まった。

 

「別に予定確認って感じなんだろうけどさ。毎回空いてますアピールしてくんの」

 

「……そうなんだ…」

 

心臓が急にドクンと跳ねた。

 

(凪くんが、自分から…?)

 

「まあ助かってるけどな?俺も今ちょっと忙しいし」

 

お兄ちゃんは気に留める様子もなく言いながら、また書類に視線を戻していった。

 

私はスマホの画面をぼんやり見つめたまま
さっきの言葉がずっと頭の中を回っていた。

 

(……なんでわざわざ…)

(ほんとにただの予定確認?それとも…)

 

胸の奥がじわじわ熱くなる。

ドクンドクンとうるさい心臓の音。

 

(……もう、やっぱりこれ…)

(絶対、意識してる…)
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