黒兎の相棒は総長でも止められない
なんて言えば
凪くんの優しいキスがふっと離れた頃。
私はまだ少し熱の残る頬のまま、なんとなく胸の奥がじんわりしていた。
でも――ふと現実がじわじわ押し寄せてくる。
「……ねぇ、凪くん」
「ん?」
「……お兄ちゃんに、なんて言えばいいんだろ……」
小さく呟いた自分の言葉に、自分でも少し混乱してしまう。
昨夜のことを考えたら、どう説明していいのかわからなかった。
「だって、私……昨日、泊まるなんて急にだったし……」
「んで、泊まってこの結果だしな」
「~~~っ!」
恥ずかしくて、思わず枕に顔を埋める。
背中まで熱くなるのがわかる。
「……バカ…そういうこと言わないで…!」
凪くんはクスッと小さく笑った。
その笑い声すらも、どこか優しくて心地よかった。
「……まあ、心配はしてんだろうな。あの兄貴だし」
「……だよね……はぁ……」
私は小さくため息をつきながら、顔を横に向けて凪くんを見た。
「……怒るかな…?」
「さあな。だけど――」
凪くんは私の髪をそっと撫でながら、目を細めた。
「俺は別に後悔してねぇよ」
「……っ」
不意に心臓がまた跳ねた。
「だから、お前も余計なこと考えんな」
「言いたくなきゃ、俺が全部適当にごまかしてやるから」
その言葉が、妙に心の奥に優しく落ちてくる。
私は枕に顔を半分隠したまま、小さく呟いた。
「……凪くん、ずるい…」
凪くんはふっとまた笑って、私の額に軽くキスを落とした。
「知ってる」
優しくて甘い朝の空気。
けれど、少しずつ現実の波が静かに迫ってきているようにも感じていた――