黒兎の相棒は総長でも止められない
収まる抗争
行けェェッ!!!」
怒号とともに再び殺到する相手の群れ。
鈍い鉄の音、叫び声、爆音――地獄のような夜が続いていた。
兄はナイフを片手に前に出る。
凪は肩で息をしながらも、血走った目で周囲を睨んだ。
「凪、まとめてこっちに引きずり込む!」
兄の声が響く。
「わかった」
凪は後退するフリをしながら、追いすがる数人を誘導する。
背中を兄に向けた瞬間――
「今だ!!」
兄が走り込んだ。
ナイフの柄で一人の顔面を叩き、次に回り込んだ男の足を払う。
鉄棒を振り上げてきた奴の腕を掴み、無理やり捻り潰すように地面へ叩きつけた。
「……まとめて潰すぞコラァ!!」
凪も続けて残った相手の腹に正確に拳を叩き込む。
膝を突いた男の側頭部にもう一発。
相手が呻き声と共に崩れ落ちる。
「次!!まだいる!!!」
だが――ここでようやく流れが変わり始めた。
次々に倒れていく仲間を見て、相手側の残党たちの足が一歩、また一歩と鈍り始める。
焦り、戸惑い、恐怖――
リーダー格の男が歯ぎしりしながら叫んだ。
「ビビんな!下がんな!!」
だが、その声にも力がなくなり始めていた。
「お前がビビってんだろ」
兄が低く吐き捨てる。
凪も静かに口を開いた。
「終わりにしろよ。……もう逃げ場ねぇぞ」
その声に、相手側のメンバーが一人、二人と後退を始める。
「チッ……!」
リーダー格の男が悔しそうに後ろへ下がった。
そして――ついに残った数人が、散り散りに逃げ出し始めた。
「逃げんなオラァ!!」
兄が叫ぶが、もう追わなかった。
残されたのは倒れた男たちと、傷だらけの黒兎の面々だけだった。
静まり返った工業地帯の路地に、凄惨な匂いと熱気だけが残る。
兄はゆっくりナイフをポケットに戻し、深く息を吐いた。
「……やっと片付いたな」
凪も肩で息をしながら、兄の隣で小さく頷いた。
「……ああ」
お互いの視線が交わる。
その目の奥には、戦い抜いた余韻と、わずかな安堵が浮かんでいた。
けれど、どちらもまだ言葉にはしなかった。
まだ、完全に終わったとは思えない感覚が――身体に残っていたからだ。
怒号とともに再び殺到する相手の群れ。
鈍い鉄の音、叫び声、爆音――地獄のような夜が続いていた。
兄はナイフを片手に前に出る。
凪は肩で息をしながらも、血走った目で周囲を睨んだ。
「凪、まとめてこっちに引きずり込む!」
兄の声が響く。
「わかった」
凪は後退するフリをしながら、追いすがる数人を誘導する。
背中を兄に向けた瞬間――
「今だ!!」
兄が走り込んだ。
ナイフの柄で一人の顔面を叩き、次に回り込んだ男の足を払う。
鉄棒を振り上げてきた奴の腕を掴み、無理やり捻り潰すように地面へ叩きつけた。
「……まとめて潰すぞコラァ!!」
凪も続けて残った相手の腹に正確に拳を叩き込む。
膝を突いた男の側頭部にもう一発。
相手が呻き声と共に崩れ落ちる。
「次!!まだいる!!!」
だが――ここでようやく流れが変わり始めた。
次々に倒れていく仲間を見て、相手側の残党たちの足が一歩、また一歩と鈍り始める。
焦り、戸惑い、恐怖――
リーダー格の男が歯ぎしりしながら叫んだ。
「ビビんな!下がんな!!」
だが、その声にも力がなくなり始めていた。
「お前がビビってんだろ」
兄が低く吐き捨てる。
凪も静かに口を開いた。
「終わりにしろよ。……もう逃げ場ねぇぞ」
その声に、相手側のメンバーが一人、二人と後退を始める。
「チッ……!」
リーダー格の男が悔しそうに後ろへ下がった。
そして――ついに残った数人が、散り散りに逃げ出し始めた。
「逃げんなオラァ!!」
兄が叫ぶが、もう追わなかった。
残されたのは倒れた男たちと、傷だらけの黒兎の面々だけだった。
静まり返った工業地帯の路地に、凄惨な匂いと熱気だけが残る。
兄はゆっくりナイフをポケットに戻し、深く息を吐いた。
「……やっと片付いたな」
凪も肩で息をしながら、兄の隣で小さく頷いた。
「……ああ」
お互いの視線が交わる。
その目の奥には、戦い抜いた余韻と、わずかな安堵が浮かんでいた。
けれど、どちらもまだ言葉にはしなかった。
まだ、完全に終わったとは思えない感覚が――身体に残っていたからだ。