バーテンダーズ - Dance with Cocktails -
美青年の提案を聞いて、俺は首をかしげる。ミモザ……花の名前だっけか?
「シャンパンとオレンジジュースのカクテルです」
「あの、俺、そんなにお酒、強くなくて」
「では、オレンジジュースを多めにいたします。
少々お待ちください」

美青年は深々とおじぎをした。まるで踊り終わったダンサーが、
観衆の前でおじぎをするような優雅さだった。
そして、奥に引っ込む。奥は厨房のようだった。

「彼、エルって言うんだ。
若いけど優秀なバーテンダーだよ」
松本さんがそう説明してくれる。へぇ、エルさんって言うのか。
きれいな名前だな。
「あと、もうひとり、アールって言う子がいるの。
あとでおもしろいものを見せてくれるよ」
「おもしろいもの?」
俺が首をかしげると、いきなり、入り口のドアがバンッ! と開いて、
「エル、おなかすいたー!!」
黒いもじゃもじゃ頭で丸顔の男性が、元気よく入ってきた。
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