婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
しばらくして、丘の下に白い砂煙が立ち上るのが見えた。

やがて、兵を従えた馬の列が、まっすぐこの丘へ向かってくる。

陽光を背に、堂々と先頭を進むその姿――クリフだった。


「来た……」

私は思わず呟いた。

風が吹き、草が揺れる。

軍旗がはためくたび、彼の意思がこの丘に届くようで、胸が熱くなる。

私の手紙に応えてくれた。

彼はまだ、私の言葉に耳を傾けてくれるのだ。

その事実だけで、私は一度、大きく息を吐いた。


しかし、隣に立つベンジャミン王の顔には緊張の色が浮かんでいた。

「彼は……私を討ちに来たのではないか?」

低く呟いたその言葉が、心に刺さる。

もし、クリフがまだ誤解しているなら。

もし、私の手紙が届いていなかったなら――。

私は胸の前で手を握り、祈るように言った。

「どうか、ご安心を。クリフは、もう変わったのです。きっと、戦いのために来たのではありません。」

それでも不安は拭いきれなかった。

私は丘の上から、まっすぐに進んでくるクリフの瞳を見つめた。

どうか、話し合いのために来てくれたのだと――私の信じた彼でいてくれるのだと、心から願っていた。
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