婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
そして、ついにクリフが兵を率いて小高い丘に現れた。

馬上の彼は凛とした気配をまとい、静かに風を切ってこちらへと歩を進めてくる。

その姿は、かつて私が愛し、恐れた国王――でも今は、私が信じたい男だった。


クリフはベンジャミン王の姿を認めると、無言で馬を降りた。

すかさず傍にいたグレイブが手綱を引き、彼を支える。

どこか緊張した空気が流れた。


「ベンジャミン王。やっと会えた。」

先に口を開いたのはクリフだった。

だが、その声音にはどこか探るような冷たさがあった。

「私も同じ思いだ。」

ベンジャミン王も応じる。

けれど二人の間に歩み寄る気配はない。

ただ、静かに風だけが吹いていた。

私はじっとその様子を見守った。ああ、どうか……。

そして次の瞬間、クリフが少しだけ前に出て言った。

「早速だが、なぜこの度、この国に進軍したのだ。」

その問いには剣気すら感じられた。

だが私は知っている。

この問いは、誤解を解くための第一歩――二人がもう一度、対話できることを願う声だった。

どうか、この言葉の先に、争いではなく理解が生まれますように。

私は祈るように二人を見つめていた。
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