婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
父はどうにかして、どうしても貴族と私を結婚させたがっていた。

公爵だけでは足りずに、伯爵にまで話を広げていたのだ。

だが、どれだけ話が進んでも、婚約の話は一向に決まらなかった。


そんな中、グレイブは変わらず毎晩私の窓辺に来てくれた。

「大丈夫だ、アーリン。公爵様もいつか分かってくれるさ」

その言葉に私は何度も救われた。

彼の腕に抱きしめられると、まるでこの世の全ての不安が溶けていくようだった。


だが、グレイブは決して私にキスをしようとはしなかった。

「私を好きなら、キスして。」

思わず私は彼の顔を覗き込み、甘えるように言った。

しかし彼は真面目な顔で首を振る。


「結婚の許しもないのに、そういうことはできない。」

その誠実な態度が、逆に私の心をかき乱す。

彼のそんなところに惹かれている自分がいる一方で、少しだけ寂しさも感じてしまうのだ。


甘くて切ない夜の時間。

愛されている実感はあるのに、距離の壁を感じる。

グレイブの生真面目さが、私の気持ちを焦らせていた。

それでも彼の存在だけで、私はまた明日を頑張れるのだと信じている。

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