婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
クリフはいつだって私を大切に扱ってくれた。

話す言葉も、見つめる瞳も、すべてが優しさに満ちている。

夜会の間も、彼は私の隣を離れず、周囲の友人たちにも誇らしげに私を紹介してくれた。


「こちらが私の婚約者、アーリンだ」

彼の声は誇りに満ちていて、その言葉に私は胸が熱くなった。

友人たちも暖かく迎えてくれ、自然と笑顔がこぼれた。

クリフの隣にいることで、私がただの政略結婚の駒ではなく、彼にとってかけがえのない存在だと実感できたのだ。


「アーリンは本当に素敵な女性だ。君と出会えたことを誇りに思うよ」

そう囁かれた瞬間、私は言葉にならない幸福を感じた。

これから先、クリフと共に歩む日々はきっと穏やかで、満ち足りたものになるだろう。

私の中に、そんな希望の光がゆっくりと灯った。


夜会の華やかさに包まれながら、私は心の中で何度も繰り返した。

“クリフと一緒なら、どんな未来も乗り越えられる。”

今まではただの希望でしかなかったものが、今夜真実になった。

婚約者のクリフの気持ちが、私にあると分かったからだ。


「アーリン、君の事は私がずっと守るからね。」

そう囁くクリフに、微笑む私。

誰がどう見ても、私達は愛し合っている婚約者同士だった。


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