婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
夜会の華やかな雰囲気の中、妹のセシリーが私の元へやってきた。

「セシリー、あなたも夜会に参加していたの?」

「姉に続いて、婚約者を見つけろって事ね。」

「まあ。」

セシリーは、自由奔放で気ままな性格だった。


「アーリン、どうしたの?」

私達の様子を見て、クリフがやってくる。

本当はセシリーをクリフに紹介したくはない。

でも、親同士が決めた婚約の縁とはいえ、家族を紹介するのは自然なことだと思っていた。

「クリフ、こちらは妹のセシリーよ」

私は微笑みながら言った。


セシリーは屈託のない笑顔で手を差し出し、クリフも軽やかにその手を取った。

二人のやりとりは一見和やかで、私は安心した。

だが、その瞬間だった。

クリフの表情がほんの少しだけ変わったのだ。

いつもの優しい瞳が揺らぎ、わずかに困惑したように見えた。


「大丈夫?」私は小声で尋ねた。

彼はすぐに微笑みを取り戻し、「何でもないよ」と答えたが、その声にはどこか力がなかった。


私はその様子が心配で、無意識にセシリーの方へ向けられる彼の視線を追った。

彼の目が、妹に向けられているのを感じたのだ。

セシリーは無邪気に話し続け、楽しそうに笑っている。

その笑顔がまた、どこか私には眩しく見えた。

私は胸の中に小さな不安を抱えつつも、笑顔でその場を乗り切った。

けれど、その時から心のどこかで、何かが変わっていく予感がしてならなかった。

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