婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
時間が止まったようだった。釈放されると思っていたのに、私はまだこの冷たい牢獄に閉じ込められていた。

薄暗い空間で、絶望がじわじわと心を蝕む。

涙は何度もこぼれ落ち、祈るように声をあげた。

「私はやっていない……助けて……」


その時、外から聞こえた叫び声に、胸が震えた。

「アーリン!」

聞き覚えのあるその声は、まぎれもなくグレイブだった。

鉄格子の前にひざまずく彼の姿に、私の中に小さな光が差し込む。


「なぜ君を信じなかったんだ」と涙混じりに叫ぶ彼の声。

普段は強く厳しいグレイブの弱さが、その言葉に詰まっていた。

彼の真実の想いが伝わり、私は胸の奥の氷が溶けていくのを感じた。

そして、彼の手が鉄の格子を握りしめ、強靭な力でそれを引き裂いた。

鉄の音が響き渡り、長い暗闇の終わりを告げるようだった。

開かれた扉の向こうに伸ばされたその手を、私は震える指でしっかりと掴んだ。


その瞬間、彼の腕に包まれ、初めて本当に「生きている」と心の底から感じた。

冷たかった世界が一気に温かく、鮮やかに染まっていく。

「もう二度と離さない」グレイブの誓いが、まるで剣のように胸に刺さる。

どんな困難も、もう一人で抱え込むことはない。

彼と共に、どんな闇も乗り越えていく。

絶望と孤独の牢獄から救い出してくれたのは、私の唯一の光、グレイブだった。

これからは、ただ一つの真実を胸に進んでいく。
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