婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「うそ…でしょう…?」

鉄格子の向こうに閉じ込められた瞬間、私は全身から力が抜けた。

まるで、夢を見ているようだった。いや――これは悪夢だ。

罪もないのに、私は今、牢に閉じ込められている。クリフの命令で。

「なぜ……どうしてこんなことに……」

誰に言っても届かない。

牢の中は暗く、湿っていて、悪臭が立ち込めていた。

与えられる食事は冷たく固いパンと、濁った水だけ。

排泄も、人目のあるこの小さな空間でしなければならない。


これが「王の命令」だというのなら、私は――

どれほど国に尽くそうと、どれほど人を癒そうと、

一度気に入らなければ、罪人として扱われるのか。

私は唇をかみしめた。

涙は、出なかった。

出してしまえば、すべてが壊れてしまいそうで。

(グレイブ……)

心の中でただ一人、彼の名を呼んだ。

どうか、気づいて。

どうか、私を信じて――。



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