婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「申し訳ございません。私には事実上の夫がいます。」

私ははっきりと断るつもりで言葉を放った。けれど、クリフの表情は変わらなかった。

「だが、グレイブとはまだ夫婦の契りを結んでいないだろう?」

その言葉に思わずドキリとした。どうしてそれを知っているのか。

「なぜ、それを……?」

問い返す私に、クリフは静かに答えた。

「あの者の性格は知っている。アーリンの父親に許されない身で結婚はしないだろうし、結婚しないうちはアーリンに手を出さないはずだ。」

その言葉に、私は胸がぎゅっと締め付けられるのを感じた。

クリフはまるで、私とグレイブのことを旧友のように知り尽くしているのだ。

剣術の鍛錬を共にし、互いの心を理解しているのだろう。
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