婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「国王。王妃に相応しいと仰っていただいて、誠に感謝しています。」

私はそっとクリフを抱きしめた。

かつて愛した人。その温もりは懐かしく、けれど今は違う意味を持っていた。

「ですが、あなたが選んだセシリーを信じて下さい。」

そう言って身を離そうとした瞬間——


「そうだ、アーリンを王妃にすればいいんだ。」

驚いて振り返ると、クリフの目はまっすぐに私だけを見つめていた。

「何を馬鹿な……国王の配偶者から王妃の立場を奪うことはできません。」

私が否定すると、クリフはふっと笑いながら言い放った。

「セシリーとは離婚する!」

その瞳には狂気にも似た執着が宿っていた。私は思わず息を呑む。

「なあ、アーリン。また私たちは愛し合おう。」

――違う。私はもう、あの頃の私じゃない。

私の心は、グレイブにある。

けれど、今のクリフはそれを理解しようとしていない。

ただ私だけを、必死に求めているのだ。
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