婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「アーリンを、私の部屋に連れて行け。」

その低く沈んだ声に、私は背筋が凍る思いがした。

胸の奥に嫌な予感が満ち、全身がこわばる。――無理やり、襲われる。

そんな恐怖が、脳裏をかすめた。

「お止め下さい!」

私は声を張り上げ、一歩、後ろへ下がった。

だが、その瞬間だった。

背後から伸びてきた護衛の手が、私の腕を掴む。

「離して……!」

もがこうとしたが、力の差は歴然だった。


「大丈夫だよ、アーリン」

クリフはゆっくりと立ち上がりながら、私に微笑んだ。

その目はどこまでも深く、どこまでも狂おしく――、優しさとも執着ともつかない色をしていた。

「君が求めるまで、私は何もしない。」

――その言葉に、私は息を呑んだ。

優しい声だった。けれど、その優しさの奥には、私を手放すつもりなど一切ないという決意がにじんでいた。

私は首を横に振った。
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