婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
それから毎日、グレイブは私を心配して宮殿にやって来てくれた。

「アーリン!」

グレイブの大きな声が、ここまで聞こえる。

「グレイブ……」

だが側にいるのは、クリフだけだ。


その時、使用人がまたドアの側までやってきた。

「グレイブは、アーリンは確かに宮殿に行ったまま、帰って来てないと言っています。」

「調べたんだな。」

グレイブ。そこまで私を助けようとしてくれている。

どうすれば、グレイブにこの声が届くのーー⁉


「グレイブはその力で、この3階までやってきています。」

「ここは国王のプライベート空間だ。誰も入れん。グレイブを返せ!」

クリフは起き上がると、窓からグレイブの様子を観察した。

「全く、一人の女の為にここまでするとは……」

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