空が夕闇に変わる頃

「なるほど・・・いいですね、じゃあやりますか、ババ抜き」

実際、トランプなんて何年ぶりだろう。いや、何十年ぶり?子供の時に遊んだ以来だ。

「言っとくけど、美麗ちゃんとは勝負にならないわよ」

早坂さんの言葉の意味は、すぐにわかった。おばあちゃんは自分がババを持っている時、顔が険しくなる。そしてそのババに手をかけると表情がパッと明るくなる。わかりやすいにも程があるだろう。途中何度か指摘をしたが、我慢出来るのは最初だけですぐに表情に出てしまうのだ。

「ねえ、まだ続ける?」5ターン目が終わったところで、早坂さんがトランプを置いた。

「いえ、やめましょう。これ以上は、おばあちゃんがかわいそう・・・」

「1回も勝てながった!遊里もつえーども、雪音もつえーな!ガッハッハッ!」

「・・・おばあちゃんには誰でも勝てると思う」

「今度あなたが来る時までに特訓しておくわ」

「今度は瀬野さんも含めて、4人でやりましょう」

早坂さんは笑いながら片眉をクイっと上げた。「アレはアレで問題ありだけどね」

「どーゆうことですか?」

「勝負事向いてないのよ」

「あー・・・なんとなく、わかる気が・・・」

超がつく正直者の瀬野さんの事だ、おばあちゃん同様、わかりやすいんだろう。早坂さんはクスクス笑いながらトランプを束ねた。

「いつの間にかこんな時間ね。雪音ちゃん、そろそろ送ってくわ」

気づいたら、22時を回っていた。ご飯を食べてトランプをしただけなのに、楽しい時間はあっという間だ。本当はまだ居たかったけど、我儘は言えない。

「よろしくお願いします」と、ソファーから立ち上がった瞬間、ふらつく足元。そのまま前につんのめりそうになり、早坂さんの腕に支えられた。

「ご、ごめんなさい・・・」

「あなた、酔っ払ってる?」

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