空が夕闇に変わる頃
「ていうか、二日酔いじゃなかったの?」
「あら、よくわかったわね」
「具合悪い=二日酔い=100パーセント。でしょ」
一真くんがハハッと笑った。
「アンタも行くでしょ?その悲惨な顔もアルコール入れば少しはマシになるんじゃない?」
「ただでさえ赤いのに?わたしは予定あり」
「なんのよ」
早坂さんが迎えに来る時点で、誤魔化しようがない。だから正直に答えるまでだ。
「早坂さん来るから」
「えっ」 ハモったのは、春香と一真くんだ。
「今日も来るわけ?」
「・・・うん」
そうか、色々ありすぎて時間の感覚が麻痺していたけど、早坂さんは昨日もここに来ているんだ。
「なんで?」
「ん、ちょっと用事があって」
また根掘り葉掘り聞かれるのを覚悟していたが、今日の春香の反応は違った。わたしをジッと見据える。
「用事、ね。アンタ馬鹿の一つ覚えみたいにそう言うけど、付き合ってもいない男女がそんな頻繁に会う?」
──あ・・・"ヤバい"。
毒を吐くのはいつもの事だが、わたしにはわかった。春香が本気でイラついている事を。わたしに対して不信感を抱いていることを。
「春香。あのさ・・・」
「なによ。実は早坂さんと付き合ってました、とか言うわけ?」
「違うよ。付き合ってない」
「あそ。それで?」
これも、いつもと同じ。どうでもいいかのような口調。でも、感じる。その裏にある切実な訴えを。
──じゃあ、どうすればいい。何を言うのが正解?
言葉が、出てこない。結局、わたしは何も言えずに終わるだけだ。
「1つ聞くけど」
「・・・え?」
「何か面倒な事に巻き込まれてるとかじゃないわよね」
「・・・えっ?」
「早坂さんよ。あの人のせいで何かに巻き込まれてるとか、そーゆう事ではない?」
「・・・何かに?って?」
「あー!だから、何かによ!警察とか!家庭とか!性癖とか!とにかく何でも!」
「せい、へき・・・え?いや、違う、そーゆうんじゃ、まったく、ぜんぜん、違う」
「あっそ、ならいいわ。何してるか知らないけど、こんな秘密主義ほっといてあたし達は飲みに行きましょ〜」
わたしは洗っていたグラスを放り投げて、春香の首に抱きついた。
「ちょっ・・・なによ」
「ゴメン・・・何も言えなくて。心配しなくて大丈夫だから」
「そんなこと一言も言ってないけどね」