空が夕闇に変わる頃
「そんなに怖い夢だったの?」

「・・・怖いというか、悲しいというか、怖かったです・・・リアルすぎて」

「リアルすぎて?」

「はい。考えてた事がそのまま出てきたというか・・・」

「単純ね。あなたなら十分あり得るけど。というか、もうお昼を過ぎてるわよ?どうやったらそんなに寝れるのかしら」

空舞さんの毒も、今なら優しさに感じる。

「昨日ちょっと飲み過ぎて・・・」

「見ればわかるわ」

空舞さんが言っているのは、テーブルに散乱したビールと酎ハイの缶の事だ。正直、どうやって寝たか記憶がない。飲み過ぎたせいで悪夢を見たのか?
コーヒーでも飲んで頭をスッキリさせよう。

「妖怪を見たわ」

ベッドから起き上がりかけたわたしは、またベッドへ仰向けに倒れ込んだ。

「・・・また・・・ですか?」

「ええ。でも今回は大した事ないわ」

「というと?」

「その辺にいる妖怪よ」

「というと?」

「人面魚よ」

「・・・その辺にいるんですか?」

「ええ。たまに見かけるじゃない」

「・・・わたしは1度も見たことがありません」

「まあ、害はないでしょうから放っておいても大丈夫でしょ」

「そうなんですか?」

「たぶん」

「たぶんって・・・」

──ああ、どんな妖怪でも、見たら報告しろと早坂さん達に言われてるんだっけ。害がないならその必要はないのでは?

「空舞さん、大丈夫だって断言してくれませんか」

「何を?」

「その人面魚、害はないって」

「そんなのわからないわ。泳いでるところしか見たことないもの。なぜそんな事を言うの?」

「そうじゃなきゃ、報告しなきゃならないんです。早坂さん達に」

「すればいいじゃない」

わたしは顔だけ起こし、ヘッドボードにいる空舞さんを見た。

「それが嫌なんですぅ!」

空舞さんが首を傾げる。

「なぜ?」

なんでも、ですぅ!」

「喧嘩でもしたの?」

「・・・喧嘩では、ないですけど」

また天井を見上げる。いや、喧嘩なのかも?

「だったら正輝にすればいいじゃない」

再度、顔を上げた。

「空舞さん、天才」

そうだ。別に、早坂さんに連絡をする必要はない。あの2人は"セット"だし、どちらに連絡しようと同じ事だ。
──我ながら、都合のいい理屈だと思う。しかし、わたしはソレを通すのだ。何故なら?早坂さんに連絡したくないからだ。
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