年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
出会いの翼
梅雨の合間にのぞく淡い青空が、滑走路の向こうに広がっている。

六月の終わり。外は湿気を含んだ風が蒸し暑さを運んでくるが、空港の中は冷房が効きすぎて少し肌寒く感じるほどだ。

出発ロビーで案内をしていた私は、今まさに飛行機に乗り込もうとする女の子が小さく手を振っているのに気づき、周囲を気にしつつもそっと手を振り返す。

出発ゲートへ急ぐ人、到着を待つ人、足早に通り過ぎる人。それぞれが自分の目的に向かって歩んでいるのだろう。そんな人々にとって、ここはただの通過点かもしれない。

それでも私は、この「グランドスタッフ」という仕事が好きだ。

しかし、その笑顔の裏で、今日の私の心の中はどんよりとしている。その理由は、心の片隅で昨日父から言われた話が何度も響いているからだ。

『見合いをしろ。ようやくお前も家族の役に立てるんだ、うれしいだろう?』

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