年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
奏多君の帰りを待つ時間さえ、心が弾む。こんな自分がいることを初めて知った。
鍋の中を確認すると、鶏肉が柔らかく煮込まれ、おいしそうに仕上がっていた。あとは火を弱めて煮込みながら、奏多君の帰りを待つだけ。
実家にいたときは、両親や沙羅に言われるままに過ごし、一日があっという間に終わっていた。
でも今は、掃除は家政婦さんがやってくれるし、仕事から帰宅した後は、自分の時間を十分に取ることができる。
最近、新しく始めた中国語の勉強をしばらく続け、ふと時計を見ると、もう二十一時を過ぎていた。
そのとき、インターフォンの音が鳴る。
モニターを確認するまでもなく、奏多君しかいない。
少し慌てて火加減を確認し、鍋の蓋を閉じる。そのままエプロンの裾を整え、深呼吸をして玄関へと向かったほぼ同時に扉が開く。
Tシャツに緩めのブラックのパンツ、サングラス姿の奏多君が中へと入ってくる。
視線を下に向けたまま靴を脱いでいるだけなのに、ちらりと見えた鎖骨にドキッとしてしまう。
「あっ、おかえり。えっと」
なにか言葉を探そうとしたが、その前に彼と視線が合う。奏多君はなぜか無言のまま、視線もそらさずじっと私を見つめていた。
その瞳にドキッとして、胸の奥がざわついて、落ち着かなくなる。