年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「ちょっと疲れたから癒されたい」
癒されたい……。そう言うことなら役に立ちたい。そう思い、心臓の音が聞かれないようにと願いつつ、少し躊躇しながら彼の背中に手を回した。
「お疲れさまでした。これぐらいでよければ、いつでも癒します」
思わず敬語になってしまったが、ひとまず伝えられてほっとする。けれど、その安堵も束の間、奏多君はすぐに距離を取った。

やりすぎた……?
不安が胸をよぎり、慌てて問いかける。

「あっ、嫌だった?」
その瞬間、短く絞り出された声が聞こえた。
「ごめん」

次の瞬間、温かいものが唇に触れて、なにが起きたのかわからず一瞬、思考が止まる。けれど、遅れて理解した。
――キス、された?
謝られた直後のキスに、混乱と驚きで頭が真っ白になる。だが、奏多君の腕からすっと解放されたとき、ふと彼の顔を見上げると、普段は落ち着いたその瞳が、どこか熱を帯びていることに気づき、今度は心臓が止まりそうになった。

「今のは望海が悪い。そんな誘うような顔をするから」

低く囁かれた言葉とともに、再び唇を奪われる。今度は先ほどよりも深く、ためらいのないキスだった。驚いたものの、好きな人にキスをされて嫌なわけがない。
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