年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「こちらが正しいゲートです。今からでも十分間に合いますので、ご安心ください」

そう伝えると、男性の表情がふっと和らいだ。肩の力が抜けたのか、小さく息を吐き、私に向かってお礼を口にしながら、穏やかな笑みを浮かべる。

こういう瞬間があるからこそ、この仕事を続けていけるのかもしれない。

目立たなくても、ほんのわずかでも誰かの役に立っている。それだけで十分だと私は思う。たとえ自己満足だと言われても構わない。

足早にゲートへ向かう背中を見送りながら、私は静かに頭を下げた。

定刻通りに機体が無事飛び立つのを見届け、今日のスケジュールを思い返しながら、休憩を取るためにバックヤードへと歩き出した。

 
若林(わかばやし)望海(のぞみ)、三十一歳。この空港でグランドスタッフとして働き始めてもう九年になる。

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