年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「小さい頃会ったこともあるのよ」
その母の説明で、遠い記憶がよみがえる。幼いころ、両親に連れられて参加したパーティー。沙羅という華やかな妹と一緒にいた少女。控えめで柔らかな笑顔を浮かべていたのが望海だった。
教育担当だった当時、あのときの少女と彼女が同一人物だとは、想像すらしていなかった。
柔らかな物腰ではあるが、決して甘くはない。御曹司だからと周囲にやたらと気を遣われる毎日に辟易していた俺に、厳しく仕事を叩き込んでくれた女性。それが、彼女だった。
そんな彼女が、見合いの相手のLATスカイの社長令嬢だったとは。
俺は研修最終日に、彼女を食事に誘ったことを思い出す。『機長になってからにしましょう』今思えば、それは彼女なりの優しさだったのかもしれない。
けれど、当時の俺はまだ幼くて、プライドばかりが先に立ち、それから彼女に必要以上かかわってこなかった。
今では、あのころの自分がどういう感情で誘ったのか定かではない。淡い憧れのようなものだったのか、それともーー。
「わかった。予定しておく」
「ええ、本当?」
あっさりと返事をした俺に、母はかなり驚いたようだった。
機長になった今、改めて彼女と話してみたい。ただそれだけの思いが、心の奥から湧き上がってきた。 見合いをしてみて、話がなくなるのならそれでいい。そう思いながら、実家をあとにした。