年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
要領が良く父の機嫌を取るのも上手な沙羅は、父にとって「役に立つ娘」だ。

それに比べ、控えめでおとなしかった私は、父から心ない言葉を浴びせられた。

「お前はどうしてそんなにダメなんだ」「沙羅を見習え」——そう繰り返し言われるうちに、私は次第に自信を失っていった。

そして、一番頼りにしたかった母は、強い父の後ろで、ただ黙っているだけだった。

 

感情を押し殺したまま大学を卒業した私だったが、それでもこの仕事に就きたかった。

家業の関係で空港にいることも多かったし、飛び立つ飛行機は、私にとって自由の象徴のように思えた。

家族の反対を押し切り、採用試験を受けたのは、その強い思いがあったからだ。

「社長の娘が働くなんて恥だ。一切、他言無用にしろ」——父にはそう命じられたが、別に構わなかった。

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