年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
採用にどこまでコネがあったのかはわからないが、仕事を始めてからはそのことを一切伏せ、自分の力でやってきたつもりだ。

沙羅には「地味で目立たない仕事なんて、私なら絶対に無理。他人のふりしてよ」と言われたが、その方が私としても助かったぐらいだ。

 

(『どんな些細なことも、飛行機を安全に、定刻通りに飛ばすために必要なこと』)

新人のころ、先輩にそう教えられた。

そして今、私がそれを後輩たちへと繋ぐ番になった。些細なことでも、空港という特別な場所では大きな意味を持つのだと信じている。

 

「どうなっているんだ!!」

歩いていた私だったが、不意にカウンターの方から大きな声が聞こえ、急ぎ足でその場へ向かった。

「お客様、申し訳ございません。もう一度確認させていただきます」

そう声をかけるスタッフの前で、不機嫌そうに腕を組み、搭乗券を指で叩いている中年男性の姿が目に入った。

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