年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

「これでいいよね……」
味噌汁の湯気がほのかに立ち上るのを見つめ、ひとりごとのように呟く。そして、ふと時計に目をやると、ゆっくり朝食をとる時間はなさそうだった。行儀が悪いと思いつつも、おにぎりを手に取り、その場でかじる。

父と沙羅は、自分たちの立場を利用しているのか、毎日ぎりぎりの時間に出勤していく。

それなら自分で準備すればいいのに……そう思うが、どうせ「役に立たないんだから、これくらいしろ」と言われるに決まっている。それを拒めば、「仕事をやめて家のことに専念しろ」と言い出しかねない。

そんな状況になるくらいなら、やれることはやっておいたほうがいい。
自分の部屋に戻ると、いつも通りのメイクを済ませ、シンプルなブラウスにストレッチ素材のテーパードパンツを合わせた。冷房対策に薄手のジャケットを羽織り、通勤用のトートバッグを手に取る。最後にローヒールのパンプスを履いて家を出た。