年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


芽衣はあからさまに不服そうな顔をしている。でも、社長のひと声で決まったことなら、覆すのは難しい。
きっと人選の背景なんてなにも考えていないのだろう。あるいは―——北村さんの父親からなにか頼まれたのかもしれない。

「ねえ、望海。今日、夕方で仕事終わりなんでしょう? 本当に嫌だとは思うんだけど、少しでいいから見に来てくれない? 若林社長も来るから失敗は避けたくて」

「私が?」
思いがけない申し出に、思わず怪訝な顔を向けた。
父と顔を合わせるのは避けたいし、鷹野君とも、今はできれば会いたくない。

それでも、芽衣が一生懸命準備を進めてきたことを思うと、簡単には断れなかった。現場が混乱すれば、会社全体の印象にも関わるだろう。

そして、北村さんが万が一対談相手に失礼な態度をとったら――それを想像すると、もう他人事には思えなかった。
「……わかった。詳細、あとで送って」
少し考えてそう返すと、芽衣がほっとしたように息を吐き、安堵の笑みを浮かべた。
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