年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


経験に基づくエピソードを交えながらも、難しい言葉は使わず、就活中の学生にもわかりやすいように配慮された語り口。聞いているだけで、誠実な人柄とプロフェッショナルな姿勢が伝わってくる。
対する北村さんはというと、ひとことでいえば、終始〝準備不足〟だった。

質問の意図を読み違えたり、答えに詰まったりと、しどろもどろになる場面が何度もあった。そもそも研修があけたばかりで十分な実務経験もない彼女が起用されたたこと自体が間違っていたとしか思えない。

「では北村さん、ご自身が入社されてから、特に印象に残っている出来事などはありますか?」
インタビュアーが優しく問いかけると、北村さんは一瞬フリーズしたように黙り込んだ。

「い、印象に残ったこと……ですか? ええと……あの……」
目は泳ぎ、言葉は途切れ、沈黙がその場に落ちる。
重く、妙な間ができた。その瞬間、誰ともなく、視線が一方向へ集まっていく。

 ――私の方へ。

父は露骨に苛立ちを見せ、無言の圧をこちらに向けている。芽衣は気まずそうに目を伏せ、私のそばへ近づいてきた。
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