王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上
「シャルロッテ侯爵令嬢! 貴様とは婚約破棄をする!」

「どうぞご自由に?」

 それは、王太子の無謀な婚約破棄から始まった。







「わ、私が……アルベルト公爵と結婚ですって!?」

 穏やかな午後。伯爵家の応接間に、ディアナ伯爵令嬢の大声が響いた。
 父親は顔をしかめて耳を(ふさ)ぎ、当の公爵は涼しい顔で紅茶に口を付けていた。

「ディアナ、もっと令嬢らしい振る舞いをしなさい」

「で、ですが……お父様……!」

「そんな態度ではアルベルト公に嫌われるぞ」

「べ、別に嫌われても構いませんからっ!」

 ディアナはきっと公爵を睨み付けた。
 艶のある黒髪に、切れ長の赤い瞳。整った目鼻立ちは、多くの令嬢たちを虜にする怪しい美しさを持っていた。

 優雅にお茶を飲むアルベルトの視線が、ディアナに向く。すると彼はふっと口の端を上げて、厭味ったらしく笑った。

(もうっ! なんなのよ、こいつ! 絶対に嫌がらせで縁談を持ち込んだんだわ!)

 ディアナ伯爵令嬢とアルベルト公爵は犬猿の仲(・・・・)で有名だったのだ。


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