キスはボルドーに染めて
 じっと画面を見つめたまま動かない蒼生に、陽菜美はそっと顔を上げた。

「蒼生さん……?」

 陽菜美が声をかけると、蒼生は静かにうなずいた後、陽菜美をぐっと抱き寄せる。

「父親からだ」

 蒼生の硬い声に陽菜美ははっと目を開いた。

「お父さまから……?」

 蒼生は静かにうなずくと、ゆっくりと身体を起こす。


「明日、兄が帰国する。それを受けて、今後の話をするから必ず来いと言っている」

「え……」

 陽菜美は慌てて起き上がると、蒼生に向き合うように前に座る。

「陽菜美も、一緒に来て欲しいんだ」

 蒼生はそう言うと、陽菜美の両手をきつく握りしめた。

「私も……? でも、行っていいんでしょうか……」

 家族の話し合いに、自分が顔を出して良いものなのだろうか。

 戸惑う陽菜美に、蒼生は迷いのないすっきりとした瞳を覗き込ませた。


「陽菜美には、すべてを見ていて欲しいんだ。俺が前へ進むために……」

 もう迷いのない蒼生からは、強い気持ちが伝わってくる。

 陽菜美は深くうなずくと、蒼生の手をぎゅっと握り返した。
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