キスはボルドーに染めて
「結翔は、蒼生の子よ……蒼生の子なのよ……」

 なおも繰り返す純玲に、その場が静まり返った時、話をじっと聞いていた美智世が顔を上げた。

「このままでは話は平行線のまま。わかりましたわ。ではこうしましょう。DNA鑑定をさせてもらいます」

「DNA鑑定……!?」

 純玲がはっと顔を上げる。

「そうよ、あなたもその方がいいでしょう? ちょうど結翔くんは、別の部屋で秘書が面倒を見ているようだし。今秘書に言って、結翔くんの髪の毛を……」

 美智世はそう言うと、おもむろにスマートフォンを取り出す。


「やめて!」

 その途端、バッと立ち上がった純玲が、美智世のスマートフォンを取り上げた。

「結翔に手を出さないで!」

 純玲はそう叫び声を上げると、スマートフォンを床に叩きつける。

 ガンッという鈍い音がして、スマートフォンは転がっていった。

 そのやり取りに、室内はしーんと息を飲んだように静まり返る。

 皆の視線にはっと我に返った純玲は、みるみる顔を歪ませると「わぁっ」と声を上げそのまま泣き崩れたのだ。
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