キスはボルドーに染めて
 美智世はいやらしくチラッと横目で純玲を見ると、そのまま静かに目を細める。

 話の成り行きがわからず、陽菜美は困惑したように蒼生の側に寄った。

 美智世は静かに立ちあがると、並んで立つ蒼生と陽菜美の方へ向き直る。


(わたくし)はこの三年間、蒼生さんを見てきたわ。噂通りの人物なのか見極めるために……」

「美智世社長?」

 蒼生はやや驚いたような声を出すと、陽菜美と顔を見合わせた。


「私はね、うちの社員を信頼しているの。もちろんこの二人も含めてよ。さぁ蒼生さん、真実を話してちょうだい。あなたが何故、たった一人で悪者になったのかを……」

 美智世の声に陽菜美ははっと顔を上げる。

 美智世はひどく蒼生を嫌っていたはずだ。

 でも、その心の内では、唯一この問題の真実を見定めようとしていた人なのかも知れない。


「蒼生さん……」

 陽菜美が見上げると、蒼生は静かにうなずく。

 それからしばらくして、蒼生は三年前を思い出すようにゆっくりと口を開いた。
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