キスはボルドーに染めて
「すごい女性がいるもんだな」

 蒼生の呆れたような声に、陽菜美はくすくすと肩を揺らす。

「ちょっと厳しすぎたんじゃないですか?」

「あれくらい言った方が彼女のためだ。それに……」

 蒼生は言葉を止めると、急にまじめな顔で陽菜美をまっすぐに見つめた。


「陽菜美の名誉を傷つける奴は、たとえ誰であっても俺は許さない」

 静かだが重みのあるその声は、陽菜美の心をぐっと掴んで離さない。

 いつだって蒼生の言葉は、陽菜美を救い、陽菜美に自信を与えてくれるんだ。

「蒼生さん……」

 陽菜美は湧き上がる想いを抱きしめるように、大きくうなずいた。


「じゃあ、腹ごしらえして、もうひと踏ん張りするか!」

 蒼生はにっこりとほほ笑むと、陽菜美の手からコンビニの袋をサッと取り上げる。

「はい!」

 陽菜美は大きく返事をすると、もう先を歩き出している蒼生の背中を追って駆けだした。


 ――私は蒼生さんに、必要とされる人になりたい。そしていつか、蒼生さんの隣を……。


 陽菜美は両手を胸の前できゅっと握り締めると、力強く自分にうなずいた。
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