スターリーキューピッド
出発からわずか1分。前方と左隣から飛んでくる声に、みるみる顔が赤くなるのを感じて、肩を縮こませる。

というのも、深上さんの会社の取引先が、父が勤務する会社だったから。つまり顔見知り。

知り合ってまだ2ヶ月弱ではあるものの、お互いにジビエ料理好きということで親交が深まったそうで。休日に2人でご飯を食べに行く時もあるんだとか。

家族写真を待ち受けにしているのは知っていたけれど……。


「照れてるの〜? 可愛い〜」

「そんなに恥ずかしがらなくても」

「恥ずかしいですよ……! ちなみに、その写真って、いつ頃のでした?」

「春かな。背景が桜の木だったから。帰省した時に撮ったって言ってた」


かぁぁぁっと赤面するどころか、もう湯気が出るくらい沸騰しそう。

多分それ、今年の春休みに、おじいちゃんとおばあちゃんと公園でお花見した時のやつ……!

ちょうど満開で、風でいい感じに花びらも散ってたから、記念に1枚って、観光客の人に撮ってもらって。

でも、髪下ろしてたから、私だけ頭ボサボサなんだよね……。服も白っぽいの着てたし、黒髪だったら完全にお化けだった。

お父さんには悪いけど、帰ったら他の写真に変えてもらえないかお願いしよう。
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