ハッピー・バースデー・トゥ・ミー
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週末に待ち合わせしたのは、アジア料理のお店。
「急に呼び出したのに、今日はありがとう」
大学時代からの友人であるサヤカ。元々可愛いらしい雰囲気の子だったが、最近は大人っぽくなって綺麗になった。
「ううん、こっちこそ誘ってもらえて嬉しかった。今のうちに友達ともいっぱい会っておきたいのに、みんな遠慮してくれてるみたいで」
サヤカは最近結婚が決まったのだ。
先ずはサヤカの近況を聞いた。お互いの実家に挨拶を済ませ、結納の詳細が決まったところだと言う。
「式と披露宴はしたくなかったんだけど、向こうのご両親がそれは認めてくれなくて。入籍と挙式の時期をどうするか、これから協議しないといけないの」
そうか、プロポーズされたからと言って、すぐに入籍できるとは限らないのか。
「でもサヤカと相手の方って、出会ってからプロポーズまでは早かったよね?」
「だって結婚相談所の紹介だからね。5ヵ月とちょっと。紹介されてから、仮交際、真剣交際までとんとん拍子だったんだよね」
そうそう、これを聞きたかった!
正直なところ、まだ28だったサヤカから結婚相談所に入会したと聞かされたときには驚いた。そこまでしないと結婚できないの? と。そして、そうまでして結婚したい? と。
しかし、半年以内に結婚前提のお付き合いを始めるには、サヤカのことを笑ってなんかいられないことに気づいた。
「結婚相談所だったら、みんな大体そのぐらいで決まるもの?」
「決まる場合は多分そうなんじゃないかな。でも成約率は10%ぐらいしかないの。だから、がんばって活動したんだよ」
「はあ? じ、10%!? 嘘でしょ? お金を払っているのに、9割の確率で結婚できないなんて!」
「結婚できないは言い過ぎ。相談所で婚活した結果、身近な同僚の良さに気付くっていうケースもあるらしいよ」
「同僚……」
飲み過ぎたわけでもないのに、目眩がしそうだった。
「だって手段が増えたって言っても、結婚相手と出会う場所の定番は結局、学校や職場でしょ」
学校や職場……私の場合は今さら期待なんてできない。出会えるものなら、とうに出会っている。
「何なに? アヤも結婚したくなった?」
「あー、どうかな……いい人がいればね」
サヤカに見栄を張ってどうするんだ、私。30目前に焦りを感じるようになったと、打ち明ければいいじゃない。
サヤカには私の本心を見透かされていたと思う。サヤカが婚活を始めたときにこっそり鼻で笑っていたことも、今になって自分も婚活を始めたくなっていることも。
それでも追及はされなかった。流石、結婚できる子は人間ができている。
落胆したのを必死に隠し、披露宴に出席する約束をして、サヤカと別れた。