繋いだ手、結んだ指先で。
◇
翌日以降、山岸さんや笹野さんに何か言われることもなく、金曜日になった。
朱那はわたしが北条くんのところに行くとわかっているから、いつものように玄関の前で別れる。
保健室のドアには【ただいま不在】のプレートがかかっていて、鍵がかかっていた。
廊下からも入れるドアはあるけれど、そこから訪ねたことはないし、驚かせてしまうかもしれない。
ここで待っていても立川先生がいつ戻ってくるかわからないから、思い切って相談室のドアをノックする。
「あれ……?」
何度か叩いてみても返事がない。
手をかけると鍵は開いていて、中に入るとカーテンを閉め切った薄暗い空間がひとつ、その奥に、いつも北条くんのいる部屋が繋がっている。
ふたつの部屋を仕切るドアのすりガラス越しに、人影が見えた。
向こうからもノックしているようで、急いで鍵を開ける。
「三瀬さん、出られなくてごめん。このドアそっちから鍵がかかってると開かなくて。保健室側のドアも立川先生が鍵閉めて出て行ってたから」
「えっ、密室だったってこと?」
「いつもは開いてるんだよ。外には出られるし」
ドアが閉め切られていたというのに、北条くんは全く焦る様子がない。
それにしても、保健室側からならわかるけれど、わたしの入ったドアが閉まっていたのが不思議だ。
「さっきまで人が来てたから。そいつが閉めたんだろうな」
「先生か誰か?」
「先生にそいつとは言わないよ。遠藤って知ってる? 確か、今は5組だったかな。友だちなんだ。ここに来てることも知ってる」
5組の遠藤くん。
すぐには思いつかなかったけれど、小学校が一緒で一度同じクラスになったことがある。
遠藤京汰くん。
あまり接点はないし、北条くんと関わりがあるなんて知らなかった。