私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
「あっ!はい!今、持っていきます!」
慌ててジュースを運ぼうとした瞬間、自分の足にガツッとつまずいてしまった。
あ、転ぶ―――そう思うより早く、オレンジジュースが入ったコップが宙を舞う。
バシャッ
ガランッと空になったオレンジジュースのコップがテーブルの上に転がる音。
転ぶはずだった私の体は大きな手が支えていた。
オレンジジュースの香りが空気中に漂った。
ぽたぽたとジュースの水滴が床に落ちる。
なにが起きてしまったのか、すぐに理解できなかった。
私に触れている手があの美しい音を奏でているのだと思うと、なんだか不思議な気分になった。
夜が溶けたような闇色の瞳の中に自分の姿が映っているのが見え、慌てて体を離した。
「ご、ご……ごめんなさ……」
自分のドジ加減に泣きたくなった。
オレンジジュースを頭からかぶったのは私の憧れの人であるチェリストの梶井理滉。
セクシーな大人の男のイメージはオレンジジュースをかぶった今も健在だ。
「ほ、本当に……も、申し訳ございません……」
涙声になる私に声をかけたのは梶井理滉ではなく、向い合わせで座っていた女の人だった。
慌ててジュースを運ぼうとした瞬間、自分の足にガツッとつまずいてしまった。
あ、転ぶ―――そう思うより早く、オレンジジュースが入ったコップが宙を舞う。
バシャッ
ガランッと空になったオレンジジュースのコップがテーブルの上に転がる音。
転ぶはずだった私の体は大きな手が支えていた。
オレンジジュースの香りが空気中に漂った。
ぽたぽたとジュースの水滴が床に落ちる。
なにが起きてしまったのか、すぐに理解できなかった。
私に触れている手があの美しい音を奏でているのだと思うと、なんだか不思議な気分になった。
夜が溶けたような闇色の瞳の中に自分の姿が映っているのが見え、慌てて体を離した。
「ご、ご……ごめんなさ……」
自分のドジ加減に泣きたくなった。
オレンジジュースを頭からかぶったのは私の憧れの人であるチェリストの梶井理滉。
セクシーな大人の男のイメージはオレンジジュースをかぶった今も健在だ。
「ほ、本当に……も、申し訳ございません……」
涙声になる私に声をかけたのは梶井理滉ではなく、向い合わせで座っていた女の人だった。